三重の人×ぺぺろんP対談風景

三重の人×ぺぺろんP対談風景

ボーカロイドという言葉をご存知でしょうか?2007年以降ボーカロイドは10代の若者の間で、社会現象を巻き起こし「ボーカロイド文化」は、新しい形の芸術として、日本から世界へ羽ばたこうとしています。

今回は、ボーカロイドを活用し、現在トップアーティストとして活躍されている作曲・編曲家(ボカロP)、映像作家(動画師)のお二人をお招きし、注目のアーティストに至るまでの経緯や、作品づくりのポイントなどをお聞きしたいと思います。

ぺぺろんP

ぺぺろんP

1988年、静岡県生まれ。2007年から動画サイト「ニコニコ動画」への楽曲投稿を始める。ボカロPと呼ばれる人気の作・編曲家、小学校教員免許、中学校教員免許(国語)所有。

三重の人

三重の人

1983年、大阪府生まれ。2009年から動画サイト「ニコニコ動画」で、ボーカロイド関連の動画を投稿を始める。以後、MV動画を中心に制作活動を展開。インターネット上では知名度の高い映像製作者の一人。

ボカロP、動画師、絵師とは・・・

作曲・編曲を施したポピュラー音楽に、「音楽ソフト・ボーカロイド」を使って最終的に“歌わせる”ことのできる作曲家を指す。ボーカロイド・音楽プロデューサーの意味。略して「ボカロP」と呼ばれる。
ボカロPの音楽と、イラストレーターのコラボレーションで生まれる画像を、より魅力的な映像へ昇華させる映像作家を「動画職人」や「動画師」と呼ぶ。
音楽と連動して動き出す文字や絵を自在に操り、職人技と称賛されたことが由来である。これに習い、魅力的なイラストを描く画家を「絵師」と呼ぶ。

これらの作品は「同人活動」と呼ばれる半素人の有志の手により「ニコニコ動画」など動画投稿サイトを通じて拡がっていった。プロの作品以上のアイデアやクオリティーに多くのネット視聴者が驚愕し支持した。
ボカロP、動画師、絵師は活動開始時のニックネームやあだ名をそのままアーティスト名にし、実名を明かさない方もいる。

虹原ぺぺろんさん、三重の人さんが音楽や映像製作活動を始めたきっかけをお伺いします。

高校時代にバンドを組んでいたので、その時に初めて作曲の仕方を勉強しました。バンドで人前で演奏するのが楽しくて、それから作曲にのめり込みました。
大学でもバンドを組もうと思ったんですがメンバーが集まらなくて…でも一人でずっと曲は作っていました。大学生になって時間もできしバイトして機材を買うお金もできたので、結構な時間を作曲に費やしてましたね。
2007年になると、その時話題になっていた「初音ミク」を手に入れて。それ以前からずっと「ニコニコ動画」は見ていたんですが、どんどんボカロが盛り上がってきたこともあって、「いまオリジナル曲をアップしないと乗り遅れるな」と思って、2007年10月に初めて自分の作品を投稿しました。

映像を作り始めたのは18歳か19歳の時。僕〝オタク〟で、ちょっとPC用のゲームにハマりまして…それをきっかけに動画を見始めて、最初は趣味で作り始めました。ニコニコ動画が始まるずっと前のことです。

作り方は完全に我流で、本を読んで勉強、ということは当時はほとんどしませんでしたね。欲望に忠実に動くと、覚えるのが早いんです(笑)。

その後、映像制作の会社に就職しましたが、そこがいわゆるブラック企業…、あまりにも過酷だったので会社を夜逃げ同然で辞めてしまって。そこで一度、映像製作からは完全に離れたんです。

そして、家電量販店での仕事を始めたんですけど、そこでは一転して、年末年始後に2週間の休みをもらえるような〝ホワイト企業〟だったんです(笑)。あまりにも休みが長くて、暇つぶしも兼ねて映像製作を再開しました。
基本的に休みの日の時間つぶしとして動画を作っていましたが、「164」というボカロPから「新曲(the end)の動画を作ってほしい」と言われたのが、本格的な活動をするきっかけになりました。
作品を投稿してコメントが返ってくるとすごく嬉しいですよね、最初って。
そうですね、そこで作品製作にハマる人って多いと思いますよ。

ぺぺろんP、三重の人にとって転機となった出来事はありますか?

一つは2008年頃にボカロのCDを初めて作ったことですね。ニコニコ動画で音楽を発表して、ある程度、曲数がたまってきたからじゃあ出しましょうっていう感じで、自分の中では自然な流れでした。元々同人などでアルバムやゲームの曲を収録したものを売っていたので、ボカロのCDも最初から結構売れたんですよ。
もう一つは2012年にメジャーアルバムを出した時ですかね。これは同人のアルバムをエイベックスさんが聴いてくれていたことがきっかけでした。
ぺぺろんPさんはメジャーデビューで環境は変わりました?
単発の契約だったのでそんなに大きく変わったわけじゃないですが、それ以降の製作活動の自信がつきましたね。
僕の転機は家電量販店の仕事を辞めた時ですね。2009年にオワタPの『パラジクロロベンゼン』という曲の動画を作った頃から作る数が多くなってきて、普通の仕事が全然できなくなったんです。
仕事と動画製作、この先どうしようと考えたんですが、「よし、30歳まで遊ぼう」と思い立って。当時の仕事で貯めた貯金もあったし、30歳までは動画製作に専念しようと決めたんです。
とにかく休んだり考えたりする時間を確保したかったんです。僕の場合、動画作りに取り掛かるまで2〜3日、下手したら1週間かかることもあります。仕事を辞めて専念できる時間が持てるようになりました。

ぺぺろんP、三重の人の作品についての抱負をお伺いします。

ところで、ぺぺろんPさんはどうやって動画を動画師さんに依頼するんですか?
もうなくなってしまったんですが、以前は「ボーカロイドにゃっぽん」(ボーカロイドファン専用のSNSサイト。2013年にサービス終了)を使っていました。
そこで知り合った、絵師・動画師の「御厨わた」さんが、最初は曲について感想を言ってくれたり、「今回の曲のイメージイラストを描きました」って連絡をくれるところから始まりました。
そのうちにわざわざ依頼するという感じでもなく「一緒にやりましょう」ってなって。全然堅苦しい雰囲気じゃないんです。動画を作ってもらうときに、その人が本当に自分の曲を好きで作ってくれるっていうのが重要です。イメージを共有できるまでが早いんですね。そして、今でも絵を描いてもらうことがあります。
ぼくも動画師として、ぺぺろんPさんの動画師さんとのディスカッション方法に興味がありますね。
僕は「こういう曲だからこんなイメージの絵で」と、結構細かく伝えます。自分で簡単な絵を描いたり、イメージに近い画像を検索して伝えたり、おもちゃ屋さんで似たようなおもちゃを買って「こういう感じで」と説明することもあります。

なるほど、人によってだいぶ違うよね。丸投げする人もいるしね。

丸投げしてきたのにうるさい人が一番やっかいですね(笑)。
たしかに。でも、それはそれで面白い部分もあるよ。依頼される側としては、「よし、やってやろうじゃないか」と(笑)。頼まれたことに自分なりのプラスアルファを少しだけ混ぜてみたり、そういうのが面白い。それがドカンとウケたりしますから。
黒うさPの『千本桜』の時もそうでした。「ここ、もうちょっとこういう風にしたらいいんじゃない?」っていう積み重ねは大事だと思います。
何となく作った作品って、聞き手にはわかるんじゃないかな、とすごく思います。やっぱり熱がないんですね。
ただ「きれい」、ただ「クオリティーが高い」で大抵の作品がそれで終わってしまう。
「本当に作りたくて作っているんだな」っていうのを感じられる作品が、最終的には聞き手に受け入れられるんだと思います。
そこが商業音楽とネット系音楽の最大の違いですよね。例えばクオリティーが高いものを求めるんだったら商業音楽を見て聞いておけばいい。絶対そっちの方がいい作品が出てきます。商業音楽にはない何かを求めている人たちが集まるのがインターネット系の音楽だと思う。
やっぱり同人とかニコニコ動画じゃないと聞けないもの、見られないものっていうものはありますよね。
「クオリティーは稚拙だけれど、見てみたらすごくいいじゃん、面白いじゃん」っていう作品はたくさんありますよね。そういうのが面白いから、みんながバッと集まってボカロって大きくなってきたんじゃないかな。
僕もボカロを使って曲作りを始めた時は、仕様上、出したい音が出せないことで結構悩んだ時期もあったんです。
でも割り切って「ボカロを使ってしかできないことをやればいいんじゃないかな」と思ったら、それまでといい意味で全く別の作品が作れるようになりました。技術みたいなものより、もっと大事なものがあるのかなと感じました。

2012年 CD・DVD エイベックス・エンタテインメント「ReFraction-BEST OF Peperon P-」を発表
代表曲「シルバーバレット」動画イラスト 御厨わたさん
2013年 書籍 ヤマハミュージックメディア「ボーカロイド公式 調教完全テクニック」を発表
2013年より 大学・専門学校非常勤講師を務める(東京工芸大学 バンタンゲームアカデミー)
2014年 アーティスト柴咲コウさんのシングルカップリング曲を制作
●独自のボカロ調整技術を生かして新型VOCALOIDのデモ・ソングを数多く担当
2012年「VOCALOID™3 Lily」デモソング「Lying and Lying」
2014年「VOCALOID™3 Chika」公式デモソング「エト・セトラ」
2015年「VOCALOID™4 がくっぽいど V4」公式デモソング「In Your Dark」
2015年「VOCALOID™4 Megpoid V4」公式デモソング「Possibility」

WhiteFlame official youtubeチャンネルより

2009年1月の「the end」の発表以降、2011年発表の自身最高のヒット作、現在1000万再生を超えている
「千本桜」をはじめ、100万再生以上の動画を40本以上手がける。
Daisy×Daisyや小室哲哉氏などともMV映像制作でコラボしている。
2012年 DVD ジェネオン・ユニバーサル「三重の人/創造Endless」を発表。
●「千本桜」カラオケJOYSOUND発表の実績
2012年「VOCALOID™ランキング1位」「総合ランキング3位」
2013年「うたスキ動画ランキング1位」「VOCALOID™ランキング1位」「総合ランキング3位」
2014年「年代別カラオケランキング10代・20代の部1位、30代の部2位、40代の部5位」「総合ランキング3位」
2015年「年代別カラオケランキング10代・20代の部1位、30代の部3位、40代の部10位」「総合ランキング9位」